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『色鮮やかに染めのアート』 ~千引 えみこ作品展~
~千引 えみこ作品展~
「制作に時間がかかるけれど、4ヵ月程で仕上げた」という色鮮やかな染めの作品45点を発表。モチーフの中心は『花』。多彩な色彩を表情で表現、会場は華やいだ雰囲気に。はがき大サイズから60㌢×11・5㍍。キャリア 7年で通算3回目の個展。
白い木綿の生地にロウで線を引き、色を変えながら染料で染め、定着液につけてから水洗いをして乾燥させる―この工程を何回も繰り返して作品を仕上げるという手間のかかる手法。
当初は、インドネシアの伝統的な『バティック』と呼ばれる染の技法を学んだが「今では独自に好きなようにやっています」。ロウケツ染めの分野ともいえる。
作品は、花の世界。明るく鮮やかな色彩。バラ、カラーを染めた作品もあるが多くはイメージの花。それを風に揺れるように生き生きと表現している。
昨年5月、還暦を迎えた記念の大作は、真っ赤な空間に白で縁取られた赤い花が画面いっぱいに広がり、また黄色い空間にはワインカラー調の花、ブルー調の中には赤い花…など色彩のコントラストが美しいる現代的な感覚である。
札幌市厚別区厚別中央2の5、デュオ2、新さっぽろギャラリーで3月1日まで。
◆ 写真は、鮮やかな色彩の染めの作品
ちびき えみこさん
「ロウの線引き、染めは失敗したらやり直しがききません」。制作にはロウを溶かす電気を始めガス、水道も必要。溶かしたロウはインドネシアで使われているチャンテインと呼ばれる容器に入れて線を引く。4月1日から札幌の石の蔵ぎゃらりぃはやしでも個展を開く。札幌北斗高校時代は美術部に所属、油絵ほ描きボタニカルアートも。1949年後志管内岩内町生まれ。札幌市西区宮の沢2条1丁目12の5。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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『郷里の自然を雄大に』 ~福井 路可洋画展~
~福井 路可洋画展~
道教育大学札幌校時代の1980(昭和55)年に国展(国画会展)に初入選以来30年、制作の拠点を08(平成20)年に室蘭から東京に移して2年―。ふる里である胆振管内穂別町(現むかわ町)の厳しくも美しい自然を原点にしたスケールの大きな作品22点を発表。3号から100号。札幌での個展は、05(平成17)年以来だが個展、グループ展は数多い。
作品は「取り組んで10年くらい」というミクストメディア。パネルに目の粗い布地を張りアクリル絵の具で描くほか、バーナーで焼いて黒く焦がした板も使うなど独自の画風を確立している。
その作品は風、雨、海など自然の響きが広がるような光景を深いマチエールと明るい色彩で展開した心象の世界。作品『海の景―09・7』(100号変形)は、ややワインカラー調のブルーが広々と広がり、『風の景』(40号)は、大地に降る雨の音が響いてきそう。
画面に焦がした板を十字状にクロスさせて立体感を作り上げているのも特徴。
ドローイングによる裸婦像の大作2点もあり、自然の鼓動と生命力が洗練された色彩で強調されている。
札幌市中央区南1西3、三越9階ギャラリーで3月1日まで。
◆写真は、広々としたスケールの作品『海の景―09・7』(100号変形)
ふくい るかさん
色彩が年々スマートに。「色彩が明るくなったと言われています。」国展で1990(平成2)年国画賞、92年 I・W賞、93年 T・Y賞、94年奨励賞、99年会友優作賞。全道展で1981(昭和56)年から84年まで連続奨励賞、85年に40周年記念賞、92年会友賞。03年には第22回損保ジャパン美術財団選抜奨励展で損保ジャパン美術賞も受賞。4月の国展には300号の大作を出品する。国画会、全道展会員、文化女子大学教授。1959年胆振管内穂別町(現むかわ町)生まれ。東京都町田市鶴川1の25の50、アステル102。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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“本”テーマに社会へ問いかけ ~三神 恵爾展~
~三神 恵爾展~
「額縁に入れて飾っておく美しい絵ではなく、社会性や人間の内面性を追及する作品」―。『廃墟から』をテーマにインスタレーションを中心に水彩、墨などで描いた平面の作品を会場いっぱいに展示、現代社会の問題点を問いかけている。2006(平成18)年以来の個展。
絵画、文学、映画評論など幅広い分野で活躍しており、今回の個展のテーマは『本』。「本には言葉がいっぱいある。だが、現代社会は言葉、つまり会話が通じなくなっていて多くの問題を引き起こしている」。
作品『家をもたぬ孤児たちの歌声』は、カラフルに彩色された新聞紙大程の作品“本”が、床面から壁面にせり上がるように何個も、何かを訴えるように展示されている。同時に直径約10㌢の多数の容器に鳥の羽根、ドングリやクルミ、木片などの廃棄物が…。現代社会での破壊行為を印象づけている。
そんな中で赤、黄、ブルーなど美しい色彩の毛糸が床面から壁面に向かって伸びている。『生命』の強調である。
壁面に展示された『天使に届かぬアリア』など7点も響きのある筆勢で“いのち”を印象づけている。
札幌市西区琴似2の7。メシアニカルビル、ソクラテスのカフェギャラリーで28日まで。
◆写真は、会場いっぱいに展示されたインスタレーション
みかみ けいじさん
「言葉が通じない時代になって来ており、心が失われている」。テーマの『廃墟から』は、内面的な廃墟を意味している。発表は、常に社会性をテーマにしている。絵画、文章教室で指導しているほか、2001(平成13)年から映画・批評の文芸誌『がいこつ亭』を発行している。作品は、コラージュが中心だが、全道展で1977年、78年に銅版画で奨励賞を受賞。著書に『アリスと少女力のまなざし』歌集に『フルクサスな空』など。初個展は1972年。1952年芦別市生まれ。札幌市豊平区福住1条7丁目3の15。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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『食器からオブシェまで多彩』 ~林 雅治とFAF工房展~
~林 雅治とFAF工房展~
1990(平成2)年に兵庫県から来道、工房を後志管内倶知安町で閉校になっていた旧寒別小学校に移して以来、今年で20年―。大小の皿、カップ類など家庭食器から“本来”のオブジェまで約100点を出品。電気窯と蒔窯があるが、今回の作品は電気窯で焼成した。
工房『FAF』(Frontier Art Farm)は、1984(昭和59)年3月に閉校していた旧小学校跡。工房を探しに来て偶然見つけた。
京都で陶芸の道に入った。出品している数々の食器類は“京焼き風”といわれ、花柄模様を中心に上品でカラフル。
上絵付けの手法。赤絵と呉須(ごす)によるブルー系の文様が中心で、茶わんや鉢には赤絵の桜、カニなどが表現され、花器などにはブルー系の唐草文などが描かれ気品を漂わせている。
これらとは別に焼き締めの皿の作品もある。それは全体が白系だが、回りをブルーの帯状で彩り、その中に白い文様…というシンプルさが印象的。
造形的なオブジェは、筒状と角状の陶器の組み合わせがパズル調でおもしろい。
札幌市南区定山渓温泉、ぬくもりの宿ふる川ギャラリー蔵で3月31日まで。
◆ 写真の作品は数々の花を表現した『飯茶わん』
はやし まさはるさん
1963(昭和38)年から実父で京都の陶芸家も沐雨氏(故人)と兄・康夫氏のもとで陶芸を学んだ。兵庫県生まれの幸子夫人も陶芸家で、3月22日から芦屋市で初めて『ふる里展』を開く。倶知安町で開窯した1990年に道展に入選、91年全道展で奨励賞。1995年から立体造形の『NAC展』に参加、98年と99年に寒別グランドアート展を主催した。04年から開かれている『風の中の展覧会』の呼びかけ人。羊を24頭以上飼育、食用に出荷している。京都府立専修陶工訓練校卒。1947年京都生まれ。後志管内倶知安町寒別103。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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『北海道の風景を詩情豊かに』 ~藤倉 英幸と旅のイメージ展~
~藤倉 英幸と旅のイメージ展~
JR北海道の車両月刊誌 『THE JR Hokkaido』 の表紙絵を1992(平成4)年5月号から担当、以来昨年12月号に描いた 『暮れの雪』 で200回となった。道内各地の風景を季節感に富み情緒豊かに描いた。その中から選んだ原画60点をそろえ、美しい色彩と詩情で北の大地の魅力を堪能させている。
表紙絵を描き続けて足掛け18年。道内各地の春夏秋冬の情景を、さわやかに、ロマンチックに、そして優しい色彩で描いた作品で旅行者を和ませてきた。
「原画60点を展示したのは初めて。北海道の魅力を伝える事が出来れば本望」という今回の作品展は、道立文学館が企画した。
作者は、洋紙を切り、張り合わせ、さらにアクリル絵の具で彩色する独自の手法。1994(平成6)年2月号の 『冬の夜』 は森閑とした冬の情緒、2000年7月号の 『青い海峡』 は函館の教会から真っ青な海を望む、05年6月号の 『緑の丘』 は広々とした美瑛…メッセージも書かれており一層旅情を誘う。
同展は4月16日から6月9日に道立帯広美術館、9月11日から10月11日に市立網走美術館で開かれ、6月に木田金次郎美術館(岩内町)でも予定されている。
札幌市中央区中島公園1の4、道立文学館で3月22日まで。
◆ 写真の絵は今年1月号を飾った 『小さな漁港に雪が降る』
ふじくら ひでゆきさん
1991年制作のJR学園都市線のポスター8点のほか製作用具、道内各地を取材した写真や下絵の一部、月刊誌の表紙そのものと特集記事なども展示。「下絵を公開するのは初めてです」。作品集も発刊された。印刷会社、広告代理店勤務を経て1974年フリーのイラストレーター、デザイナーとして独立。個展は数多く今年も5月と7月に札幌で開く。作品集に 『北を旅する』 『四季彩紀行HOKKAIDO』 などがありHBC、札幌信金などのカレンダーの原画も担当。岩内高卒。1948年岩内町生まれ。札幌市手稲区新発寒3条1丁目6の12。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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明快な色彩で情緒豊かに ~石岡 剛 洋画展
~石岡 剛 洋画展~
“出会いを求めて”をタイトルに色彩豊かに描いた油彩とアクリル絵の具による作品を含めて90点を発表。ヨーロッパをメインに道内の風景、花などを明快で情緒豊かに描いている。芦別在住。会場の三越では連続4回目の個展。サムホールから30号。
美しくカラフルな色彩で描くことで定評がある。今回もフランスを中心にイタリア、ギリシャ、オランダなどヨーロッパの風景と道内各地の風景を鮮明な色彩で展開している。
最大の特徴は、思い切って、あるいはさり気なく必ず『赤』を使っていることだ。いわば“石岡カラー”であり、それが生き生きとしている。
フランスの風景 『パリの紅い木々』 は真っ赤な並木通りの向うに建物が見え、『水門のある街』 『パリ・セーヌ河』などは、さり気なく画面の下のほうに赤い花を描いている。
モナコの 『コートダジュールを望む』 は雄大なスケールの構図の中にアクセントのように『赤』が使われ、印象を深めている。
明快な色彩のコントラストと共に詩情を漂わせた描き方が印象的だ。
札幌市中央区南1西3、三越9階ギャラリーで15日まで。
◆ 写真は、明快な色彩の油彩 『パリの紅い木々』(30号)
いしおか ごうさん
海外取材が豊富で「ヨーロッパの風景は頭に入っている」。ポイントのように使う『赤』は、スペイン取材で強烈な印象を受けた結果だという。描くのも早く筆に勢いがある。1976年、77年、81年にル・サロン展に入選。1986年ドイツ国際美術選抜展、87年イギリス選抜展で金賞。芦別市のカナディアンワールドに石岡剛の世界美術館があり、芸術文化交流館・芸術の森しんじようにアトリエと展示場もある。芦別文化連盟、芦別美術協会会長。武蔵野美大卒。1945年芦別生まれ。芦別市本町38。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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67人が記念展を飾る 第100回記念 『北海高校美術部どんぐり会展』
『北海高校美術部どんぐり会展』
北海高校美術部・どんぐり会展が1915(大4)年9月に第1回展が開かれて以来、今回で100回目となった記念展。卒業生と美術部顧問51人、生徒16人が油彩を中心に水彩、日本画、銅版画、彫刻合わせて83点を出品、記念展を飾っている。記念誌も発刊、開会初日の9日に記念展の会場で祝賀会も開かれた。
どんぐり会展は、学校の美術部活動としては、北大黒百合会展に次ぐ歴史を誇り本道画壇に多くの作者を送り、影響を与えている。現役の美術部員も学生美術全道展、有島青少年絵画展などに入賞・入選し、勉学の成果を発揮している。
記念展では、どんぐり会で指導の傍ら本道画壇で活躍した本郷新、菊地又男、坂坦道、栃内忠男各氏(いずれも故人)の作品を始め現在全道展、新道展、道彩展や個展、グループ展で活躍しているOBの方々の作品が展示され、在りし日をしのばせると共に、存在感が強調されている。
学生の出展は油彩25点、銅版画7点。油彩では、昨年の学生美術全道展で奨励賞を受賞した金澤凌さん(2年) 門田結衣さん(同) の大作は、力強い筆勢で個性豊かに描いている。どの作品も入念な描き込みである。
顧問の川本ヤスヒロ先生は、油彩のほか石狩市に開窯している『花川窯』で焼成した容器や皿なども出品、入場者は思わず手にしている。
北海高校は、今年創立125周年記念でもある。
◆ 写真は、展示されている数々の写真
札幌市中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階スカイホールで14日まで。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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退官記念で41点を発表 『山本 勇一油彩画展』
~山本 勇一油彩画展~
1969(昭和44)年に東京芸大油画教官室副手から非常勤助手となり、1972(同47)年に母校道教育大学札幌校で指導、41年にわたって美術界に多くの人材を送り出してきたが、今年3月末で退官することになった。その退官記念展。A・B・C3室に1965(同40)年の抽象的な油彩から中国取材による近作まで大作中心に41点を発表、歩みをたどっている。個展は、1979(同54)年以来36年振り。
「形や色を発見し、それをどのように表現するかを考えるとワクワクする」―。形と色彩を追究し続けてきた作者の総決算といってもよい退官記念展。多彩な取り組みを見せている。
道教育大学札幌校時代に道展、国画会展に入選・入賞しており、A室には、その当時から1972(昭和47)年に道展で協会賞を受賞した大作などを出品。モチーフの中心は人物だが、B室には風景やかつての道教育大学校舎への思いを込めた 『窓』シリーズ、C室には近作の 『中国』シリーズをそろえ、力量感を見せている。
人物を中心にした情緒性とロマン、風景の幻想性、中国の風景の雄大さとストーリー性…絵画への情熱が伝わってくる。
札幌市中央区北1西3、札幌時計台ギャラリーで13日まで。
◆ 写真は、1968年に国画会展で国画賞を受賞した油彩 『女の館』(150号)
やまもと ゆういちさん
「4月の国画会展、10月の道展をサイクルに制作していたので個展が出来なかった」。今回は記念の画集を発刊した。出品は「初公開…」という国画会展で入賞・入選した大作も。1968年国画会展で国画賞、道展で1970年道立美術館館長賞、72年協会賞、73年会友賞など相次いで受賞。北の大地ビエンナーレで02年優秀賞、09年佳作・賞候補。北海道現代美術展、日韓交流美術展など多数に出品。東京芸大非常勤助手から1972年道教育大学校非常勤講師を経て90年教授。国画会、道展会員。道教育大学札幌校から東京芸大大学院美術研究科修士課程修了。1944年滝川市生まれ。札幌市北区篠路4条5丁目16の17。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)
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『ヨーロッパの風景中心に』 ~伊藤 太郎水彩画展~
~伊藤 太郎水彩画展~
「ヨーロッパは殆んど回った」―。海外の風景を中心に札幌と小樽の冬景色、さらに花や果物を描いた作品など67点を発表、会場に異国情緒が広がっている。「昨年は9回個展を開いた」ほど精力的な取り組みで、今回が209回目のベテラン。
海外取材が豊富。フランス、ギリシャ、トルコ、「初めて発表する」というヨーロッパのアルバニア共和国など各国の歴史的な建造物を描いた作品を会場いっぱいに展示、歴史性と生活感をにじませている。
フランスの画用紙に竹ペンと透明水彩絵の具で描き、空や雪、建物の『白』は、画用紙の『白』を生かしている。素早い筆勢で次々と描き上げる達者な筆力。
パリのレストラン街、階段が続くイタリア中世の村などには生活感がにじみ、ギリシャの神殿、トルコの港には歴史性とストーリーが秘められており人の気配を感じさせる。
「雪景色が好き…」で、風の風景『雪の道庁』『雪の時計台』など6点は森閑とした情緒。詩情が広がっている。
明るい色彩で描きロマンを漂わせている。0号から6号クラス。
札幌市中央区南1西3、ラ・ガレリア、さいとうギャラリーで7日まで。
◆ 写真の作品はギリシャの『パルテノン神殿』(4つ切りサイズ)
いとう たろうさん
毎年のように海外へ。昨年初めてアルバニア共和国へ行き、「今年はアンドラに行きたい」。フランスとスペインの国境の山中にある小さな国という。1985(昭和60)年の初個展以来道内外を初め海外でも発表。「1点描くのに30分もあれば…」。描くのが早く、今回の作品も1ヶ月足らずで仕上げた。スケッチブックは170冊に。2000年に発刊された『水彩画でつづるフランスの風景と美食』の絵と文を担当。理学博士。北大理学部大学院卒。1940年姫路市生まれ。札幌市手稲区星置1条4丁目8の8。
(美術ジャーナリスト 五十嵐 恒)